善光寺「お戒壇巡り」

先日、長野で行われた研修に参加した帰り道、せっかく長野まで来たのだからと、以前から一度は訪れたいと思っていた「善光寺」に立ち寄りました。
「一生に一度は善光寺詣り」と言われるほど全国的に有名なお寺ですが、実際に足を運んでみると、その荘厳さと歴史の深さに心を打たれました。

善光寺の歴史

善光寺は、長野県長野市にある無宗派のお寺で、誰でも参拝できる開かれた存在です。駅からはバスで10分程度。2kmぐらいでしたので歩いてでも行けますし、ジョギングでもすればすぐ着くような距離です。

創建は7世紀とされており、天台宗と浄土宗が共同で管理している珍しい形式でもあります。ご本尊は「一光三尊阿弥陀如来」と呼ばれる仏像で、日本に仏教が伝わった時に百済から渡来したとされる、日本最古の仏像の一つです。そのご本尊は「絶対秘仏」として一般には公開されていませんが、7年に一度「御開帳」と呼ばれる大行事があり、そのときだけ分身である「前立本尊」が公開され、多くの人々が訪れます。

善光寺本堂は国宝にも指定されており、その堂々とした佇まいは、見る者の心を自然と正してくれるような雰囲気があります。

他のお寺では経験できない、お戒壇巡り(おかいだんめぐり)

善光寺を訪れた目的のひとつが「お戒壇巡り(おかいだんめぐり)」の体験でした。

お戒壇巡りとは、本堂の床下にある真っ暗な通路を、壁づたいに手探りで進みながら、「極楽の錠前」と呼ばれる金具を探り当てるという体験です。

途中前が見えない中で手すりだけを頼りに進むのは、普段の生活では経験できません。正直前後ろに人がいたので、気配や声が聞こえてはいたのですが、完全に一人だったら不安になるのではというぐらい真っ暗でした。目が慣れるとうこともなく周りが全く見えず、錠前にたどり着くのも結構かかり想像以上に怖さがありました。

完全な暗闇の中、視界は一切きかず、本当に自分の感覚だけが頼りになります。方向感覚もなくなりそうな中で、ただ手すりを信じて進んでいくしかないという感覚がありました。そして、ようやく錠前に触れた瞬間、何とも言えない安心感に包まれました。

その体験が、ふと自分の仕事と重なるところも

私は、税理士として独立し、自分の事務所を立ち上げました。
開業当初は、右も左もわからず、まさに暗闇の中を進んでいるような感覚で、どういう関与先をターゲットにするか、どうやって関与先を増やすか、顧問料はいくらに設定すべきか、何ひとつとして明確な正解があるわけではありません。

不安の中で、ただ一つ一つの業務に誠実に向き合い、相談に乗り、資料を揃え記帳して、決算作成し申告をこなし、少しずつ信頼を積み上げていきました。最初は小さな「ありがとう」の言葉や、ご紹介でのご縁が、まるでお戒壇巡りの中で錠前に触れたような喜びに感じられたことを覚えています。

見えない中でも前に進むことで、少しずつ自分なりのやり方や方針が形になり、いまではまだこんなものでは満足できませんが、手応えを持って仕事ができるようになりました。

お戒壇巡りで感じたのは、「見えなくても、信じて進めば、必ず道はある」ということでした。

暗闇の中で怖くなったり、不安になったりしても、立ち止まらずに手探りで歩き続ければ、やがて確かな何かに触れることができる。それは、独立開業した自分のこれまでの歩みそのものだったように思います。

善光寺という古くから人々の信仰を集めてきた場所で、こんな気づきが得られるとは思ってもみませんでしたが、静かな感動とともに、これからの仕事への新たなエネルギーをもらった気がします。

まとめ

今回は、長野に行った時に訪れた善光寺での経験について書きました。
新たな気づきはどこにでもあります。貴重な体験でしたし自分自身を見つめ直すきっかけにもなりました。不安な気持ちを抱えることも少なくないのですが、真っ暗な中を進む体験と重なり、「見えないからといって、一歩一歩進めば進めないわけではなく必ず答えはある」と感じました。
暗闇の奥で「極楽の錠前」を見つけた瞬間、ふっと心が軽くなり、前に進む勇気をもらえたような気がしました。

良い見学だったと思います。

善光寺をあとにし、長野駅から帰る途中、駅の中のお店で名物の「ソースカツ丼」を食べました。想像以上のボリュームで、丼からはみ出すほどのカツがご飯の上にのっていて驚きました

衣に甘辛いソースが染み込み、見た目に反してしつこくもなく美味しく完食できました。長野といえばお蕎麦の印象が強かったのですが、このソースカツ丼もまた印象に残る一品でした。

善光寺の静けさと、お戒壇巡りで感じた仕事とのつながり、そして帰りに食べたソースカツ丼の満足感――心もお腹も満たされる素晴らしい研修の締めくくりとなりました。

またこうした「気づきのある旅」を続けていきたいと思います。

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